街を川へ開くCLTの門

作品紹介

かつて100万人都市「江戸」の物流を支えていた隅田川は、今では水辺にテラスが整備され、都市と水面が織りなす美しい景観を人々に提供しています。しかし、背後の市街地との間はコンクリートの潮受け堤防(カミソリ堤防)で分断された状態です。本提案では、浅草橋駅に近い既存の街路に隅田川に向かう軸線を設定し、街と川の接点に「門」に見立てたCLTの屋根を架けます。初期の寺社建築の屋根に見られる「持ち出し」の技術をヒントに、CLTが持つ面材と構造体を兼ねられるという長所を組み合わせ、柔らかな曲面を持つ屋根を構成します。この「門」により、東京を訪れる人々に向けて、歴史を紡ぐ隅田川のイメージを発信します。街路には川を楽しむための様々な施設を導入して観光拠点として整備し、約1.5㎞離れた浅草エリアとの間の隅田川ウォーキングを東京観光の新たな定番コースとして提案します。かつて川からの物流で栄えた街を、今度は人の流れによって再び川と結びつけます。

作品概要

受賞部門 設計部門
受賞年 2021年
賞の種類 特別賞(日本CLT協会賞)
受賞者 萩原 崇史(㈱大林組)

講評

板を並べていく単純な使い方で、伝統的な工法(持送り)を用いながら板を水辺に出していくというアイデアです。CLTの魅力である大きくシンプルな材として用い、特徴的な空間を出せている点が評価されました。ボルトで留めているので取り替えも容易。隅田川に向かう道路にCLTのボードを敷き、それを辿っていくと隅田川に架かるCLTの門に到達する、という発想も評価されました。