森をツムぐCLTホテル
作品紹介
敷地は熊本県南小国町の森林地帯で、250年の歴史をもつ林業が盛んな地域である。ここではCLTの新たな構法として、地場産小国杉を使用した厚さ270mmのCLT壁と六角形ユニットを「積む」手法を用いた。六角形ユニットは建築を構成する8層の大きな壁の梁として機能し、そのサイズによって客室やショップ、レストランなどが割り当てられる。建築は2棟構成で、棟間に六角形ユニットが浮かぶようにせり出す「森のステージ」が生まれる。敷地の傾斜に沿った階段状の「森のステージ」では、林業従事者による木育ワークショップやギャラリーが開かれ、地域住民や宿泊者が憩うパブリックな空間となる。また、ホテル収益の一部を森林の管理費に充てることで保全を促し、地元ブランドと提携して小国杉を活用した家具やアメニティを設えることで、宿泊という体験から小国杉の素材としての魅力も感じることができる。構法からホテル運営に至るまでの一連のプロセスを通じて、地場産業を活性化し森を未来へ「紡ぐ」、CLTを活用した建築生産と新たな空間構成手法の提案である。
作品概要
受賞部門 | 設計部門 |
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受賞年 | 2020年 |
賞の種類 | 農林水産大臣賞 |
受賞者 | 白石 尚也 樋口 紗矢 (九州大学大学院) |
講評
林業が盛んな熊本県の小国町に建つホテル。木をふんだんに使っていて空間が楽しげで豊かに感じるような巧みな表現力が素晴らしい点や、CLTのボックスを積むだけでなく違うところで壁を確保して居室部分は開口を大きくできるという面白い手法も評価されました。さらにこの建築は都市部でも準耐火建築物として実現可能性が高い作品である点も評価されました。