図書の森を漂うー”CLT積層柱”と”CLT耐力棚”でつくる図書空間ー

作品紹介

大木のような柱が林立する空間の中で、みんながお気に入りの本と居場所を求めて漂う森のような図書館を提案しました。 CLTを平らに積み上げてつくる“CLT積層柱”は、燃えしろの外周に「手入れしろ」と呼ぶ余地の層を持ち、この層が机やベンチ、かまくらのような居場所を形成します。さらには柱の表面をみんなで磨いてメンテナンスしていくことで、柱や空間への愛着をもたらします。薄物CLTを格子状に組み上げてつくる“CLT耐力棚”は本棚かつ耐震壁として機能し、間仕切りのように建物全体へ配置して空間を緩やかに分節させます。敷地の近隣には町役場や駅、保育園や小中学校が揃うこともあり、誰もが気軽に立ち寄れる憩いの場として、「本を読む」という体験を最大限楽しむための多様な居場所をつくり出します。また周辺地域には、林業地帯やCLT工場、製紙工場などが揃っているため、地場産材の利用や輸送コスト削減、カスケード利用による歩留の向上を図り、サステナブルな建築づくりを目指します。

作品概要

受賞部門 設計部門
受賞年 2024年
賞の種類 特別賞(日本CLT協会賞)
受賞者 吉田 京平(有限会社ビルディングランドスケープ 一級建築士事務所)

講評

本作品は、CLTならではの自由な造形性を活かした設計が特徴的です。特に、図書館内に林立する木の幹を想起させるダイナミックな柱が印象的で、単なる構造材の役割を超えたデザイン性の高い提案となっています。また、柱の躯体部分の外側に燃えしろ、さらにその外側に「手入れしろ」を設けることで、削ることでさらなる造形の可能性を持たせる工夫が施されています。これにより、将来的な変化にも対応できる柔軟な空間となっており、これまでにない斬新な提案がおもしろいと評価されました。さらに、柱の周囲には、本棚と耐震壁の機能を兼ね備えた「CLT耐力棚」が配置されており、構造と空間のメリハリを活かした設計にも注目が集まりました。加えて、本作品の発想は、カーボンクレジットの社会的な意義や持続可能な建築のあり方を考える上でも興味深いものであると注目されました。構造・デザイン・環境の視点を融合させた挑戦的な提案であり、今後の木造建築の可能性を広げる作品として高く評価されました。