CLT DESIGN AWARD
2022

ー 設計コンテスト ー

募集テーマ

結果発表

CLT DESIGN AWARD
2022
ー 設計コンテスト ー

「CLT DESIGN AWARD 2022 -設計コンテスト-」は、『駅』をテーマに 、CLTを活用した、まちの玄関口にふさわしい魅力ある駅、未来を創る進化し続ける駅の設計提案を募集いたしました。
幅広い世代の方からご応募いただき、過去最大の応募総数181点(エントリー数312件)のご応募となりました。
たくさんのご応募誠にありがとうございました。
審査委員による厳正な審査の結果、大臣賞3点、日本CLT協会賞 学生賞1点の入賞作品が決定いたしました。

農林水産大臣賞

「北の玄関口」JR上野駅

No.7

川口 哲太郎(株式会社NTTデータ)

作品コンセプト

「北の玄関口」として永く親しまれてきたJR上野駅の役割を未来へと繋げるため、派手な再開発を行うのではなく、利用者にそして地域に寄り添える駅舎とします。CLTの木質は、見た目の温もりはもちろんの事、カーボンニュートラルの取り組みへも貢献し地球にまで寄り添う事の出来る工法です。面材としての使用をはじめ、線材としてまた、既存柱のコンファインド効果を期待する新たな取り組みにも挑戦します。構造と一体となった無駄を省いた木質空間は、ラッシュ時の混沌とした空間に安らぎを与える事となります。全てを刷新してしまうのではない、ファサードの形状や中央改札口の光天幕・翼の像など過去から引き継がれる上野の風景を大切にしたく考えます。面影を残し、人々の記憶に刻まれ、経年と共に味わいを増す駅舎とし、上野恩賜公園をはじめとした周辺環境と一体となったランドスケープとして存在する事で上野のさらなる活性化に寄与します。

作品講評

壮大な構想を細かく考え、色々な要素を入れて作り込まれており、それらをしっかりと表現できている点が高く評価されました。時代ごとの工法が、パッチワークのように積み重なってきている上野駅に、この時代の新しいCLTをとり入れ、木造のものがさらに重なっていく様子は非常に面白みがあります。また、都市における木材利用に関して意欲的に取り組んでいることも評価されました。

国土交通大臣賞

”時に”寄り道する ~未来を創り進化し続ける駅~

No.67

町田 綾捺(広島工業大学)

作品コンセプト

大山街道の宿場町として栄えたこの地、そして2027年リニアモーターカーの到着駅となる橋本駅で、過去と未来の結節点として「立ち止まる駅」を提案する。 この駅は過去、現在、そして未来において共通して人の往来が激しい。かつては、参列のための休憩所として立ち寄る場所であった。しかし現在では、ただ通り過ぎるためだけの駅、進んだ先のみが目的の駅となっている。そこで、未来では立ち止まることを目的とした、そこだけ時間の流れが穏やかになるような駅を提案する。 未来はこうなっていると思う。リニアモーターカーに乗ることで時間を買う人やプチ旅行として関西圏から訪れる人、地元に帰る人、通学する人。同じ時間でも体感速度は様々だ。 だが、この駅に訪れた時だけは一様に穏やかな時間が流れるだろう。 温故知新のイノベーションを目指した未来を創り進化し続ける駅だ。

作品講評

CLTのマザーボードサイズ(3m×12m)を最大限活かし、CLTの厚い板と厚い壁の使用が綺麗に表現されているシンプルで潔い仕組みは、多くの人が受け入れるスタンダードな駅になりうる提案であると評価されました。また、駅を通して、人々が様々な出会いをする、往き来するイメージが浮かぶこと、将来をポジティブに捉えて、発展していくような構想を感じさせることが高く評価されました。

環境大臣賞

CLTの扇で織る駅

No.119

チーム名:wasa
孫銘遠(神奈川大学大学院)
王宇傑(Architectural Association DRL)

作品コンセプト

老齢化と少子化問題がある徳島県の日和佐という小さい町は、毎年大きな祭りが開催される時、小さな駅では一時的に多い観光者に対応できない。薄いCLTパネルを最大限に活用し、扇の形で駅を増築する。お祭りや大きなイベントの際に仮に設置し、大量の観光客に休憩や雨よけ、日よけ場所を提供しながら、地域の特性をアピールする。 日和佐駅の沿線牟岐線の隣に木材加工工場や再生森があって、駅の近い場所に生産し、各駅に支援できる。CLT駅の角度も調整出きって、各駅の大きさによって対応できる。まだ使わない時に町に設置し、バスのりばや花壇やパビリオンなどの施設として使われる。町の公共施設不足問題も解決できる。地域の活性化や経済に貢献する。

作品講評

CLTで可動式の扇型屋根を作り、移動、回収も可能で、沿線駅等で必要に応じて活用できる折版構造をとり入れた作品です。扇子のように屋根を開閉させる仕組みをCLTで考えるという新鮮な発想が評価されました。駅に合せて開き方の度合いをコントロールできる構造の面白さと、省エネ型の輸送で環境負荷の低減に配慮されている点、架線上空を仮設なしで施工できる点も魅力的であると評価されました。

日本CLT協会賞
学生賞

とどまることを知らない 〜未来を創り進化し続ける駅〜

No.68

菊堂 颯(広島工業大学)

作品コンセプト

宮島口駅を設計するうえで、テーマを駅とするのではなく広島の玄関口として捉え、都市の顔となるようにしようと考えた。CLTの活用と関連付けて宮島での厳島神社の鳥居に着目した。鳥居とは、神社の神聖さの象徴・神社の内と外との分ける境になることを意味するため、駅では玄関口としての駅・ホームと改札との境界として捉えて宮島の要素も取り込んだ。オープンパブリックプラザを意識することで、いろいろな用途で人を呼び込み、モチベーションによる行動の変化が起こるとも考えた。私が駅で不便だと感じたことは、立ち続ける時間が長いことである。座る場所も勿論あるが、数が少なく多くの人は座ることができない。そこをCLTの組み合わせによってその問題を解決に近づけることができた。CLTは主に柱・梁・床(これらは集成材)以外で用いており、それに加えてペデストリアンデッキにも用いている。CLTだからこそ面材を主軸にでき、たまり場が作れ、温かみを感じられる。

作品講評

存在感のあるスケールの大きい門構えは、厳島神社の鳥居を連想させる魅力的な作品であると評価されました。マザーボードの大きさを意識して取り組んでいる点は好感が持て、駅とフェリー乗り場までをCLTを用いたデッキで繋ごうという提案は非常に意欲的であり、観光資源としての魅力も感じると評価されました。審査委員からは、「もっと大スパンにするとさらに良かった」、「この地の特性として、商店街を通る計画も併せて考えてもらいたい」とコメントがありました。

審査委員長総評

審査委員長

三井所清典

芝浦工業大学 名誉教授

CLT DESIGN AWARD 2022の募集テーマは「駅」で、難しい課題だと思ったが、181件もの応募があった。CLTをプラットホームの屋根に使う提案から駅舎全体に用いる提案、さらには駅前広場から街へと広がっていく提案などさまざまで、それぞれに優れた提案が多かった。  審査は、審査委員個別の1次審査で43件に絞り、2次審査は一堂に集まり、推薦作品の説明、審議、投票、審議と次第に絞り込み、最終的に各賞にふさわしい提案が審査会の総意で選ばれた。 優秀賞の3作品は以下の通りである。線材とCLT面材を多層に重ねて組み合わせ、周辺の公園や街とつながる都市の森のような壮大な駅の提案が農林水産大臣賞に、都市近郊の駅に往き交う人々が利用する商業業務施設を複合化した市街地建築的な駅の提案が国土交通大臣賞に、扇子のような繊細なCLTの折板屋根を機械仕掛けで勾配を変化させてつなぎ、屋根と柱が単純なプラットホームにやさしさと華やぎを付加した提案が環境大臣賞に選ばれた。また、細やかな駅の機能を雄大なゲート状建築が抱え込む構想で、その大きな構えの建築は、向いの海の中に立つ大鳥居と呼応して響きあう意図の提案が日本CLT協会賞学生賞に選ばれた。